神戸・三宮の駅前から北へ向かって、北野坂を上がっていく。すこし歩くと、それまでの賑わいが嘘のように、夜の音量が一段下がる瞬間があります。車のクラクションも、酔った声も、急に遠くなる。北野坂は、神戸の中心にいながら、夜の濃度がすっと薄まる不思議な場所です。
「静かに飲めるバーを探している」とき、この街がふいに頭に浮かぶのは、たぶんそのせいだと思います。
「静かに飲める」とは、どういうことか
「静かなバー」と一口に言っても、人によって意味は少しずつ違います。BGMの音量を小さく抑えてある店もあれば、お客さま同士の会話が控えめな店もあります。あるいは、そもそも一人客が多くて、自然に静けさが保たれている店も。
北野坂の夜に向いているのは、そのどれにも当てはまる店です。賑やかさを目的にした店は、もっと駅の近くか、別の通りに集まっています。坂を上がるという、ほんの少しの手間が、結果的に「静かに飲みたい人」を選別するように働いている、という言い方もできるかもしれません。
JAZZバーが、北野坂に似合う理由
神戸とJAZZの結びつきは長く、戦後すぐの頃から、この街にはJAZZが流れていました。北野坂のJAZZバーは、その流れの末端に静かに座っている存在です。
JAZZバーは、構造的に「静かに飲む」のに向いています。なぜなら、店の主役は会話ではなく音楽だから。レコードがかかっているあいだ、お客さまの多くは、声よりも音に意識を向けます。隣の席との会話がほどよく抑えられ、自然と、店全体に「聴く」空気が立ち込めていきます。
静かに飲みたい夜に、JAZZバーが候補に上がるのは、こうした理由からです。
北野坂の夜の、歩き方
静かに飲める北野坂の夜を、できるだけ気持ちよく過ごすために。いくつか、こちらからもお伝えしておきたいことがあります。
ひとつは、急がないこと。坂を上がる足取りを、すこしゆっくりにしてみてください。神戸の夜は、急いで飲む街ではなく、ゆっくり過ごす街です。
もうひとつは、その夜の自分のリズムを大切にすること。話したい夜もあれば、ただ黙っていたい夜もあります。どちらでも構いません。北野坂のバーは、その日の気分に合わせて、ちょうどよく受け止めてくれる場所です。
さりげなくは、その「静かな選択肢」のひとつとして
「さりげなく」は、1965年に元町で生まれ、やがて北野坂へと移ってきた小さなJAZZバーです。50〜60年代のJAZZを中心に、YAMAHA NS-1000Mから静かに音を出しています。決して特別な店ではありませんが、北野坂で「静かに飲める一軒」を探していらっしゃるなら、選択肢のひとつになれたら嬉しいです。